フィギュアスケート・ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来選手と木原龍一選手。2026年2月現在、ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の熱狂の中にあり、その息の合った演技と信頼関係は世界中のファンを魅了し続けています。
そんな中、ネット上では三浦璃来選手の「目元」について、「斜視ではないか?」「なぜ手術して治さないのか?」という疑問を持つ方が一定数いるようです。また、「斜視は子供のうちに治すべきもので、大人になったら手遅れなのでは?」という不安の声も聞かれます。
本記事では、プロのファクトチェッカー兼Webライターとして、三浦選手の状況の推察と、医学的な観点から見た「大人の斜視治療」の最新情報について、1500字以上のボリュームで徹底的に解説します。
1. 三浦璃来選手は本当に斜視なのか?公式発表と現状
公式な病名の公表はない
まず大前提として、三浦璃来選手自身や所属事務所から「斜視である」という公式な診断名や、それに対する治療方針が公表された事実は、2026年2月現在においてもありません。
視聴者がテレビ画面や写真を通じて「目が外側を向いていることがある」と感じるのは、医学的には「間欠性外斜視(かんけつせいがいしゃし)」に近い状態に見えるからだと推測されます。これは、普段は視線がまっすぐ合っているものの、疲れが溜まった時やぼーっとした時、あるいは遠くを見た時に片方の視線が外側に外れる症状です。
「偽斜視」の可能性もある
また、日本人に多い「偽斜視(ぎしゃし)」の可能性も考えられます。これは、目頭の皮膚が眼球の白目部分を覆っている(蒙古襞が強い)ため、外見上は斜視のように見えるものの、実際には視線は正しく機能している状態です。三浦選手の場合、非常に激しい運動を行い、なおかつペア競技という「極限の距離感」が求められる競技でトップに君臨していることから、視機能(両眼視機能)に深刻な問題はない可能性が高いと言えます。
2. なぜ斜視(に見える状態)を治療しないのか?アスリート特有の理由
もし仮に三浦選手が軽度の斜視であったとして、なぜ手術を選択しないのでしょうか。そこにはトップアスリートならではの非常にシビアな理由が考えられます。
距離感(深視力)の変化へのリスク
フィギュアスケートのペア競技は、数メートルの高さまで持ち上げるツイストリフトや、高速回転しながら投げるスロージャンプなど、ミリ単位の距離感が命取りになる競技です。長年、今の「見え方」で脳が距離感を学習し、世界トップクラスの技術を習得してきた選手にとって、手術で急に見え方を変えることは極めて危険な賭けとなります。
斜視手術を行うと、術後一時的に「物が二重に見える(複視)」期間が生じることがあります。一般生活には支障がなくても、氷上でコンマ数秒の判断を争うアスリートにとって、この感覚の変化はパフォーマンスを著しく低下させる恐れがあるのです。
ダウンタイムと練習時間の確保
手術自体は短時間で終わるものですが、術後の炎症や違和感が完全に消え、新しい視界に脳が慣れるまでには時間がかかります。五輪サイクルで動いているトップ選手にとって、数ヶ月単位で感覚が変わってしまうリスクを負ってまで、見た目の改善(審美的な手術)を優先するメリットは少ないと考えられます。
3. 「斜視治療は子供のうちに」は半分正解、半分間違い
質問者様が仰る「斜視は子供の頃に手術するもの」という認識は、半分正解ですが、現代の医学では「大人になっても治せる」というのが定説です。
子供のうちに治療する理由:視能訓練
子供の頃に治療が推奨される最大の理由は、「両眼視機能(左右の目で見たものを脳で一つに統合し、立体感を得る能力)」の発達を促すためです。この能力は6歳から10歳頃までに完成してしまうため、重度の斜視で片方の目を使っていない場合、子供のうちに治療しないと「弱視」や「立体視の欠如」が定着してしまいます。これが「子供のうちに」と言われる所以です。
大人の斜視手術は「手遅れ」ではない
一方で、大人になってからの斜視手術も非常に一般的です。2026年現在の眼科医療において、大人の斜視手術には主に以下の2つの目的があります。
- 眼位の矯正(審美的な改善): 黒目の位置を中央に寄せることで、外見上のコンプレックスを解消します。
- 眼精疲労の軽減: 無理に視線を合わせようとして起こる頭痛や肩こりを解消します。
したがって、「大人になったら手遅れで治らない」ということは全くありません。むしろ、大人になってから自身の意思で手術を受け、QOL(生活の質)を向上させる人は大勢います。
4. 三浦璃来選手が示す「個性」とトップアスリートの姿
三浦璃来選手について語る際、最も重要なのは「その瞳が何を見ているか」です。彼女は木原龍一選手と出会い、互いの欠点を補い合いながら、日本フィギュア界の歴史を塗り替えてきました。
信頼関係で補う「視界」
ペア競技において、三浦選手は「龍一くんがどこにいても、気配でわかる」と語ったことがあります。これは単なる視覚情報の処理を超えた、共感覚的な信頼の域に達しています。仮に視覚的な特徴があったとしても、それが彼らの「絆」や「演技の質」を妨げるものではないことは、これまでの数々の金メダルが証明しています。
多様性のアイコンとして
現代(2026年)においては、画一的な美しさよりも、個々の個性が尊重される時代です。三浦選手の魅力は、その愛くるしい笑顔と、リンク上での圧倒的な力強さのギャップにあります。多くのファンは、彼女の目元を含めた「三浦璃来」という存在そのものを支持しており、無理に矯正する必要性を感じていないのが現状でしょう。
5. まとめ:りくりゅうが教えてくれること
三浦璃来選手が斜視の治療をしない(ように見える)理由は、以下の3点に集約されると考えられます。
- 競技パフォーマンスへの影響: 現在の視界で完璧な距離感をマスターしており、手術による変化がリスクになるため。
- 機能的な問題の不在: 世界トップレベルの演技ができている以上、医学的に「治療が必要なレベルの障害」ではない可能性が高い。
- 個人の選択: 外見上の悩みよりも、アスリートとしての現役生活を優先している。
斜視手術は大人になってからでも決して遅くはありません。しかし、それを受けるかどうかは本人の自由であり、三浦選手のように「今の自分」を最大限に活かして輝いている姿は、同じような悩みを持つ多くの人々に勇気を与えています。
ミラノ・コルティナ五輪の氷上で、木原選手と手を取り合い、真っ直ぐに未来を見つめる三浦選手の瞳。そこには「治療が必要な欠点」など存在せず、ただ勝利と歓喜への強い意志だけが宿っているのです。

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